第10回金沢創造都市会議
金沢創造都市会議2019 >セッションB
セッションB
「持続可能な観光 〜観光マネジメントの必要性〜」 DMOの理想形態と観光マネジメント (米沢) 先日、京都市長の発言が新聞をにぎわせていました。どうおっしゃったかというと、「今まで誘致活動していた宿泊施設を今後お断りする」と。大転換です。彼の言葉は「京都は観光のための都市ではなく、市民の暮らしを大事にしなければならない」という趣旨で発言をなさいました。現実に、ヨーロッパでもバルセロナの新しい市長が当選してすぐに、市内で建設中だった6軒のホテルの工事を停止して、郊外に移しました。また、フィレンツェでも、もう既に市内ではホテルが建てられなくなっています。そういう中で、金沢はどこまでいっているのだろうと思っていますが、私の方から、若干、オーバーツーリズムではないかという問題を、先に提示させていただきたいと思います。 それでは、金沢観光協会副理事長兼専務理事八田さんに、金沢の観光と今後の方向性についてご説明いただきます。 (八田) 金沢市観光協会の八田と申します。今日は歴史と権威のある創造都市会議ということで、非常に緊張してまいりました。私は前座としまして、数値的なものを中心に、金沢の観光の現状報告をさせていただきたいと思います。 では、お客さまはどこから来たかというのがこのグラフです。石川県全体の発地別になっております。赤が首都圏です。首都圏は開業前240万人だったものが、昨年で言うと約420万人に1.7倍になっています。その隣が関西圏です。新幹線開業前の全国的なプロモーションもあったおかげで、実は関西も0.9%ほど伸びています。少し細いところがありますが、これが東北、いわゆる仙台などです。仙台まで3時間半ぐらいで行けることになりましたので、これも実は1.8倍に伸びております。 その入り込み客をトータルしたものがこれなのですけれども、開業年で1000万人を初めて超えました。その後ずっと1000万人をキープした中で、昨年は1045万人ということで過去最高、これは開業前と比べると25%くらいお客さまが増えたという勘定になります。 先に宿泊の方に行きますけれども、昨年の年間の延べ宿泊者数が330万人です。外国人は平成26年と30年を比べると、32万人伸びています。全体で見ると55万人です。ということは、日本人の伸びは5年間で23万人、外国人が32万人ということになります。 では、その外国人の方がどこから来られたかというグラフなのですが、赤が欧米豪でございます。全国の割合が左にあって、全国では欧米豪の構成比は16.4%ですが、金沢の場合、欧米豪が35.7%となっております。実は、金沢市および観光協会としまして、重点市場をどうしようかという中で、イタリア・フランス・スペインの三つを重点市場として取り上げました。かなり市長を中心としたプロモーション活動もしまして、その成果もあったのではないかと推測しています。 そして、市内の周遊観光地。これはアンケート結果なのですけれども、やはり9割近くは金沢城・兼六園、そして74%がひがし茶屋街、その下が近江町で69%です。 公共施設しか入場者数は取れないのですが、この表でございます。まず、兼六園で言うと平成28年がピークでございまして、ここで開業前の約1.5倍になっています。そのうちの外国人だけを捉えますと、平成30年で1.9倍ぐらいになっています。その下に行きまして、東山にはいろいろな施設がありますが、これはその合計になっています。平成27年が一番多くて1.7倍です。その下、長町は1.8倍というふうに、この辺りへかなり集中してきたかなと考えております。 もう一つ、RESASの中で、まちづくりマップにメッシュでドコモの基地局にアクセスした人がどれだけいるかを示せるというものがあります。それで少し見てみました。例えば1カ月でそこのエリアに何時に何人入ってきているかが分かるデータです。 それを対比してみました。まず、11月の平日ということで、2014年11月と2016年11月を対比しております。 月間合計では、例えばひがし茶屋街ですと開業前と開業以降で1.88倍になっている。21世紀美術館ですと1.43倍になっています。さらに、一番ピークの時間帯で見ます。ひがし茶屋街は13時が一番ピークなのですが、この時間帯で言うと3.33倍、21美で言うと2.18倍という数字になっています。 同様に、これを休日で見ますと、この数字になります。ひがし茶屋街が月全体で1.32倍、21世紀美術館が1.25倍ということで、これもピーク時の方がやはり伸びが高いということで、ひがし茶屋街が14時で3.68倍、21世紀美術館が14時で2.25倍です。 実は、先ほど米沢さんから京都市のお話がありました。京都市が今のストップの前に打ち出している施策が三つありまして、季節・時期の分散化、時間の分散化、場所の分散化ということでございます。季節・時期の分散化というのは、繁忙期を少しでも長くしようとか、閑散期を少しでも少なくしようということで平準化していくことです。時間の分散化は、例えば、朝の二条城へ来てくださいとか、そういう形で時間を分散すること。三つ目の場所の分散化は、京都だけでなく、例えば大津の疏水に行ってくださいとなどということです。 今日はミツエさんが来ていらっしゃいますので詳しくはお話ししませんが、ハワイ政府の方でも「レスポンシブルツーリズム」、お客さまにちゃんと理解してもらおうというプロモーション、運動を、ずっと今やっておられます。実は先日、お話をお聞きしまして、われわれも当然こういうことは考えていくべきことと考えています。 市民・お客さま・事業者の「三方良し」。そんな形になればいいなと思っております。簡単でございますが、報告を終わります。 (米沢) 大変よくまとめていただいて、感謝を申し上げます。それでは、次にもう一つ現状報告として、近江町の老舗の仲卸の社長紙谷一成さん、お願いします。 (紙谷) 近江町市場商店街振興組合からまいりました紙谷一成と申します。ビジョン委員会という一委員会を担当いたしております。それで、近江町を代表して報告せよということでございます。今、八田さんがデータを駆使してご説明されたのに対しまして、私はふわっとした話しかできませんが、ご了承いただきたいと思います。 (米沢) お二方には後ほどまた討論に入っていただきますので、これから先は前に並んでいらっしゃる先生方から少しご発言を頂きたいと思います。 (小林) 今ご紹介いただきましたとおり、観光庁の、私の部屋は外客受入参事官室という名前で、一番コアな業務は、外国人が日本に来て困らないかという視点で環境を整備することです。例えば、言葉が通じるかとか、トイレが和式だったりすると困るとか、あとはWiFiが飛んでいるかどうか。それが一番中心的な業務で、われわれは持続可能な観光を実現したいと思っているのですけれども、持続可能な観光推進室というのが観光庁の中にできて、その事務局機能を担っている部署になっています。 石川県全体のデータです。外国人の訪問率でいきますと2.1%というところで、これは複数回答ですので重複はあるのですが、全国で19番目となっています。 そして、延べ宿泊者数。これも県単位なのですけれども、このぐらいのレベルになっています。緑は国交省北陸信越運輸局管内の他の県ですけれども、長野県が多い、あとは新潟がきて石川、富山というふうになっているということであります。延べ宿泊者数が非常に増えているということが分かります。 先ほどのお話にありましたが、新幹線開業の平成27年の52万人泊から97万人泊というふうになっておりますので、約倍近い伸びになっているのかなと思います。 日本全体で見ますと、平成27年の外国人、インバウンドの数が2000万人弱で、昨年は3119万人で1.5倍ですので、それよりは多い伸びなのかなとは思っております。 これは性別と年代です。あまり関係ないかもしれませんけれども、あえて年代で言うと40〜49歳の割合が多いということで、一般的には、こういった年齢層の方というのは、思慮深いであろうと思われます。 入国と出国の空港を分析しますと、成田空港にいらっしゃる方、もしくは羽田空港にいらっしゃる方は、新幹線で来られるのかなと思いますが、中部空港であるとか関西空港、あと小松空港の割合もなかなか多いのかなと思っています。 これは直行便の要因もあると思っていまして台北便、上海便がある。ソウル便がなくなってしまうという話があるのですけれども、そういった要因によるのかなというふうに思っております。ですので、いろいろな情報を総合すると、恐らく欧米の方は成田空港から入ってくるのではないかと推測できるかと思います。 これはクルーズですが、まだこれは参考かもしれません。金沢港に非常に多く来ておられるということになっています。 われわれがこの持続可もちろんいろいろな要素があるのですが、一つの要素として注目すべきは、消費支出です。来て、楽しんだけれども、例えば無料で入れる観光地に来てしまって地元にお金が落ちないというのも、良くない影響の一つになっております。消費額を増やすということも非常に重要だと思っておりまして、石川県全体でいくと大体1人当たり2万円の支出があると分析しております。 そして、これはもう純粋な算数であるということはよく理解しておりますけれども、外国人の方がこれだけ来ているということを、石川県の人口1人当たりに換算すると、1人当たり大体1.3万円、外国人からお金をもらっていることになるはずなのですけれども、これが一般の方に落ちるか、特定の方に落ちるか、地元に落ちるか、東京の系列の企業に落ちてしまうかというところが大きな問題であろうと。 次に、観光庁の取り組みについてお話ししたいと思います。 先ほど冒頭に申し上げましたとおり、まさに国として、遮二無二インバウンド施策に取り組んでおりまして、おかげさまで急速に外国人の方が増えておられます。他方で、混雑、マナー違反関係の課題、もしくはご指摘が非常にいわれはじめている。特に、マナーというのが非常に難しいなと、私もいつも思うのですが、われわれの生活を確かに乱してほしくないという気持ちはあるのですけれども、文化が違うので、本当はお互いに歩み寄っていくべきなのかなというふうに思うこともあるのです。ただ、ゴミ出しとかそういったものはまさにルールであるし、犯罪行為に至るようなものとか、当然駄目なわけです。受忍できない限度のマナー違反がある場合には、しっかり「駄目なものは駄目だ」というふうに言わなければいけませんが、そこはわれわれがどう観光とうまく付き合っていけるかどうかというところだと思いますので、非常に力加減が難しいのですが、一生懸命考えながらやっていことであろうというふうに思っています。 具体的に言うと、非常に観光客が集中しているエリア以外のところのプロモーションをするとか、あとは観光客が集中してしまっているところ以外の地域で例えば多言語対応をする、外国人が来やすい環境にするとか、は圧力を下げていくようなベクトルをやっていく。 これはご参考ですけれども、地方自治体に昨年アンケートをいたしました。これは全体の傾向なのですけれども、「どういった課題があるとお考えですか」と聞いたところ、マナー・ルールに関しては、トイレの利用に関するもの。ゴミに関するもの。あとは立ち入り禁止区域への進入などですね。私道に入ってきてしまうとかそういった類のもの。そして渋滞関係、ゴミの関係とか、宿泊施設が足りないという声もあったり、日帰り客が多くてお金が地元に落ちないという問題等々、このような課題が認識されています。 対策としては、地元産品の活用促進であるとか観光客の分散、もしくはマナー啓発のポスターなどに取り組まれています。 京都や金沢は、まさにオーバーツーリズムのご指摘を頂いているところですけれども、日本全体というか、国レベルでいくと、観光をもう一切、1人も受け入れられませんというほどではないのではないかというのが、この22ページです。これは国連の世界観光機関が取ったサーベイです。これについてもいろいろな議論があるのは承知した上であえてご紹介いたしますと「観光があなたの住むまちにどういう影響を与えているか」という問いに対して、わが国の聞かれた方の回答は、ポジティブなものもネガティブなものも他国と比べると低い。「観光をマネジメントするために何かの対応が必要だと思うか」という問いに対する回答もある意味低いという結果になっています。 まさに急激なインバウンドの成長痛が、国全体というよりは特定の地域において発生しているということではないかと思います。観光マネジメントが、非常に重要になってくると思っています。 具体的な取り組みについて少しご紹介しましたが、「観光指標」という少しイメージしづらい言葉でお伝えしたのは、わが国の持続可能性を測定・監視・改善していくためのツールの一つとして、ポジティブな側面だけでなくネガティブな側面も含めて実態把握するためのものを考えています。 取組事例で、先ほど京都のお話も幾つかありました。三つの集中というようなことでお話があったと思います。われわれもよく京都市と議論をしながら政策を進めてきていまして、今後、金沢市ともよく連携をしていきたいと思いますが、昨年度、京都の嵐山という非常に混雑している地域で、外国人の方が持っているスマートフォンがWiFiに接続したらそれを1人としてカウントするという仕組みで、WiFiに接続したスマートフォンの数が多い所は赤く塗って、少ない所は青くして、どのぐらい今混んでるかを見える化するということをやりました。 あとはマナー違反の関係で、これも京都の事例で恐縮ですが、先ほど近江町の事例としてご紹介があったようなマナー違反の関係が、祇園でも非常に多くいわれています。特に、祇園には舞妓さんがいらっしゃって、そういう人たちを追い掛けるとか、一緒に写真を撮ってしまうとかということで、迷惑行為が多発しているということなので、このエリアに入った瞬間に、外国人の方のスマートフォンにマナーの啓発文書を送るというようなことをしています。これはポスターを携帯電話に送るようなシステムで、あとは巡視員の配置であるとか、こういったことをやりはじめているような状況になっています。 特定の施設の混雑緩和については、いろいろ事例がありますけれども、ここ金沢でも21世紀美術館が、昨年、入場時間指定券を販売された事例もありますし、あとはミラノの事例であるとか、事前予約制を入れることによって混雑緩和をしているというようなものがあります。 政府全体の取り組みとしては、10月にG20の観光大臣会合というものが初めてありました。私も現場に行ってまいりましたけれども、経済成長の牽引と持続可能な開発に観光は貢献できるだろうということを改めて確認しました。また他方で、持続可能な観光というのが非常に重要であって、各国の知見をお互いに共有しましょうというようなことがうたわれています。 それがこのページですが、「持続可能な観光」というのは非常に大きな概念で、いわゆるオーバーツーリズム以外にも、女性の活躍であるとか、海洋プラスチックゴミ対策であるとかといったもの、一番重要だと思っていますのが観光客と地域住民の双方に配慮した観光マネジメントを促進するということで、それが国際的な合意としてうたわれましたので、今後、わが国としてもしっかりそれに取り組んでいきたいというふうに思っています。 少し拙いですけれども、われわれの勉強した結果を、こちらのURLでご紹介しております。国内外の事例も載せておりますので、もしご関心がおありでしたらご参照していただけると幸いです。私からは以上です。 (米沢) それでは次に、ハワイ州の現状をお伝え願いますけれども、ミツエ・ヴァーレイさんは、実は金沢生まれでいらっしゃいます。それではお願いします。 (ヴァーレイ) はい。皆さん、ALOHA。今回、長崎に入って、福岡へ行きまして、そのあと東京に行って、今朝、金沢に入りました。久しぶりに実家に帰省できて、大変うれしく思っています。金沢が人生の半分、そしてハワイが半分ということで、金沢とハワイにしか住んだことがないのですけれども、外に出て初めて、金沢の良さというものを本当に感じています。ちょうど先月、ハワイの石川県人会の理事にも加わらせていただきまして、新しい次世代のプロジェクトチームを立ち上げて、ハワイでも金沢のお料理教室や、そして次世代の金沢の歴史ということで、前回来たときには金沢検定の本やいろいろな本も買わせていただきました。今回、この会議で本当にレベルの高い協議をされていることに驚いたと共に、大変感謝いたしました。これが20年続いている、やはりさすが金沢だなと、ふたたび自分の故郷に対するプライドが、すごく高まった状態でございます。 私はハワイ州観光局の支局長として、東京とホノルルのオフィスの両方を統括させていただいておりますが、ハワイのDMOとしての取り組みで、ここ3年ぐらい、北海道から沖縄まで、日本のいろいろな自治体の方々との情報交換をやらせていただいております。それから、視察団が大変多いです。ハワイは世界の観光地として、アイルランドやニュージーランド、それからスペインとも、持続可能な観光に関してはいろいろな情報交換をさせていただいております。 最初に少しハワイの組織の仕組み、次にハワイの現状、そしてなぜ今サステナブルツーリズムではなくてレスポンシブルツーリズムをやっているかということを、少しお話しさせていただければと思います。 まず、ハワイ州ですけれども、もちろん観光産業は3大産業の一つです。不動産、それから商業では、中小企業が大変多いです。それから、空軍・陸軍・海軍全部ありますが、その中でも5人に1人は観光業に従事しているというぐらい、大変大切な産業になっています。そして、1日当たりの税収入が6億円あるということで、大変大きい産業です。人口は140万人ぐらいで、その80%がオアフ島に集中しています。 これが、私どもDMOのハワイ州政府関連機関の組織になります。石川県と横並びにして考えていただいてもよろしいかと思うのですが、ハワイ州知事オフィス、知事のオフィスがありまして、その下に経済開発観光機構が付いております。その横付けでHTA(ハワイ・ツーリズム・オーソリティ)、これが州観光局ですね。そしてハワイ州議会、ここで予算が決まりますので、ここがトップの自治体という形になります。 それともう一つ、ハワイでは六つの島にお客さまが訪れることができますが、ハワイ島観光局、カウアイ島観光局、マウイ島そしてオアフ島、それぞれの島のステークホルダー、企業の皆さまと連携する形で島の観光局があります。この縮図の中で、しっかりHTAが観光戦略を組みます。昔は10年戦略を組んでおりましたが、今はトレンドがすごく速く変わるので5年戦略で、そして私どもが短期の1年ごとのマーケティングプランを出していくという形になっています。 その中で、日本と違うのは、このHTAは州の機関なのですが、ボードメンバーがおりまして、全て地元の経済界のリーダーの方々が入っております。今13名おられますけれども、このHTAの予算も、それから観光戦略も、全てそのボードメンバーや業界の方々の声を拾い上げて決められて、監視の縮図ができている形になっています。 そして、HTAのミッションは、もちろん商品開発や観光産業の向上なのですが、もう一つは、労働雇用の創出です。ハワイでは、やはりハワイの若年層の方々が本土の方に行かれてしまうので、どうやってしっかりと労働雇用を創出していくかというところです。それともう一つは、自然資源の保全です。大変気候も良く、そして歴史も文化も食もあるところですので、この継続維持。そして、州民の生活向上。実を言いますとこのミッションの中では下の二つがハワイ州にとっては大切だということで、この理解を全ての業界の中で統一して、毎年これを連呼している形でございます。 もちろん効果測定もあります。一番大切なHTAの効果測定は、コミュニティの理解度、要するに観光産業が今どういう状態になっているか。そして、どういったことを一緒にやっていったらいいかという満足度の向上というものを必ずリサーチしておりまして、企業の方々、それと州民、そして来るお客さまにアンケートを取っております。 そして、ステークホルダーとの連動なのですが、日本での活動としては、必ず3カ月に1回、ホテルの皆さま、アトラクションの皆さま、そしてPR担当の皆さまと、どういった状況で、数値がどうで、そして何をやっているかを必ず報告させていただきながら、アイデアを吸い上げ、コミュニケーションを取ったり、一緒に活動できるプロジェクトを必ず作っています。 大切な財源なのですけが、私どものマーケティング予算は、全てホテル税から来ています。そのホテル税が、今は10.25%なのですね。もう1950年代からホテル税を導入しており、5.6%から始まりまして、去年、9.25%から10.25%に上げております。それが年間600億円あります。その60%ぐらいは一般予算へ行って、どこに使われているか分からないのですけれども、観光予算は今の為替の換算でいきますと82億円ぐらいですかね。毎年、この金額を観光予算に、HTAの予算に付ける。昔はパーセントだったのですが、今はこの金額でセットされています。 その金額の内訳がこれになるのですけれども、ほぼ60%は、もちろん全マーケットに使うブランディングになります。マーケティング、ブランディング、そして32%が地元のカルチャー、スポーツ、コミュニティ、自然保全、そしてセーフティということで、これだけでもかなりの予算を投下しております。 その中で、三つすごく大切なのが、ハワイアンカルチャーの維持。そして教育、次世代を教育するというところにものすごく力を入れております。あと、コミュニティ・エンゲージメント・プログラムというのは、現地の方が「コーヒーフェスティバルがしたい」「ファーマーズマーケットをもっと大きくしたい」などと、小さいイベントでもいいので、とても地元の産物を助けるようなイベントには補助金を出そうということで、毎年、たくさんのニッチなイベントや小さなファーマーズマーケットにも補助金が下りております。 これは世界の観光人口です。ウェブサイトに出ているものをグラフにしただけなのですけれども、今はこれだけ世界の観光人口が増えていて、2030年までには18億人になるといわれています。そして、今は先進国が観光デスティネーションとしてシェアが大きいのですけれども、2030年ぐらいには逆転するだろうといわれています。こういった観光のトレンドは、国内のみならず世界で見ていかないと、トレンドがどんどん変わる、もしくは客層が変わる。そして、国内もしくは州内のライフスタイルが変わっていきますので、いろいろなデータを見ていくというところで、いろいろなデータを私どもも勉強しながら分析をしております。 これは、私どものインバウンドです。世界各国をターゲットにしておりますが、アメリカだけでもう65%です。ですので、アメリカの経済にものすごく左右されます。そして、2番目に大きいのが日本マーケットの16%です。その後にカナダ、オセアニアで、中国、韓国は、まだ中国も1.5%いっていないですし、韓国も今大体2%ぐらいということです。 日米カウンシル、特にIBMの社長を務めていらっしゃいましたポール与那嶺さんは、ハワイと日本のビジネス関係を有効化するために、今いろいろなプロジェクトを立ち上げていらっしゃいますし、特に自然資源、再生エネルギーに関しましては、ハワイは沖縄と静岡とMOEを結んでいろいろとやっております。 今、人口が140万人のところに年間996万人のお客さまが来ているということで、黄色信号が出ています。それはどういうふうに分かるかというと、これはハワイ州民のツーリズムに対する満足度リサーチというものです。一時期、78%、80%ということもありました。景気があまり良くないときとか、苦しいときは、大体こうなるのですけれども、今の59%というのは、歴代で一番低いのです。 州としましてはこれを黄色信号と捉えておりまして、マネージングツーリズムという形を取っています。オーバーツーリズムという言葉は私どもは一切使うなと言われておりまして使いませんし、どういうふうにマネジメントしていくか、マネージングしていくかということを考えていこうということで、2年ぐらい前からレスポンシブルツーリズムという言葉を使いはじめました。 このレスポンシブルツーリズムなのですが、まず、傘下としては、一番上にサステナブルツーリズムというものがもちろん付きます。持続可能な観光ということでワールド・ツーリズム・オーガニゼーションが提言しております。その下に、ケープタウン宣言というものがあります。これは、責任ある旅行者になるために、どうしても観光人口が増えてきますと、それなりにいろいろな影響が出てきて、例えば特に環境面に悪影響が及ぶわけですが、それをどうやって最小限に抑えられるだろうか。もしくは、文化遺産の保全。これはハワイにとっては大変大切なことなので、金沢もそうだと思いますが、やはり来る前に知っておいてほしいこと、そして尊重してほしいこと。私どもは富裕層とかという言葉もあまり使わないようにしておりまして、アビットトラベラーもしくは質の高い旅行者とは何ぞやと言ったときに、海外旅行に大変興味があって、年に1回は海外旅行に行かれるお客さまで、文化や教育に大変関心が高い。そして、自分のヘルス&ウェルネスに大変関心が高い。そういった興味の高いお客さまのことをアビッドトラベラー、そして質の良いお客さまと定義して、そういうお客さまに早めにいろいろな啓蒙活動をすることによって、「ああ、ハワイに行ったらこういうことをやってみよう」「ハワイってこういうところなんだ」「じゃあ日系移民の歴史、日本で学べないものを学んでみよう」と。そういったいろいろな啓蒙をして、目的を持って来てもらう動機付けを、今一生懸命やっているところでございます。 ***ビデオ上映*** 先ほど、20億円も地元のカルチャーの保全、それから自然の保全にかけている、補助金を出していると話しましたが、どういったものに使うかというと、やはり日本にも職人、マスターがいます。ハワイも同じです。やはりプロの方々や、ずっと伝統を受け継いできた方々が次世代を育てていかないと、文化というものは継承していけないということで、その教育プログラムにものすごく力を入れています。 ***ビデオ上映*** いろいろなメディア媒体によって15秒、30秒のこのような縦型動画、横型動画を用意して、旅行会社様用にはDVDを作って全店舗で流していただけるように配布させていただいたり、キャリアでは機内ビデオに入れていただいたりということで、たくさん拡散して、しっかり知ってもらって、尊重していただく。けれども、「これをしちゃいけない」「あれをしちゃいけない」という言い方ではなく、現地の人たちが自分たちのライフスタイルを見せて訴える。「私たちもこれに気を付けているので一緒にやりましょう」というメッセージを流すという形で今取り組んでいます。 その他には、私ども観光局としては、やはり森林を守るために、例えばコアの木というのは固有種なのですが、それを植えて、GPSを付けて、自分の木の成長をコンピュータで見られるのです。なので、植えに来たり、もしくは代わりに植えて差し上げて、後ほどその木を見に行くというプログラムを作ったり、もしくは日本で言う里海・里山、ハワイにもアフプアアという自給自足の生活実態がありました。昔は四百何十個あった養魚池が今もう数十個しか残ってない。その復旧をいろいろなNPOが頑張ってやっている。どろどろになりながら昔の養魚池を復旧するという子どもたちの教育事業を教育旅行のプログラムに入れて、MICEの一つのニッチプログラムにする。もしくは、ホクレアというカヌーが世界一周をしました。この方々は海のグローバルウォーミングなど、特に海に関する教育事業を次世代につなげる。太平洋の航海が2021年から始まりますが、日本にも来ます。こういった方々の映画を日本全国で上映して、特に姉妹都市で高校生たちの交流をしたりする。そのような形で、観光局として、観光をベースにそういったメッセージを次世代に流していきます。 今、日本でもSDGsが大変話題になっているかと思います。私どもは国連のLocal 2030というものに選ばれているのですけれども、日本では静岡が入っているかと思います。ハワイはアメリカのリード州として、国連のSDGsの下で2030年の目標を決めました。Local 2030の中にAloha + Challengeというものがありまして、クリーンエネルギー、自然資源の管理、スマートコミュニティ、廃棄物。特に自給自足率が今、ハワイは10%なので、それを2030年までに20%にするなど、全部に目標を掲げています。 再生エネルギーでは、ちょうど先月、再生エネルギーサミットがありまして、日本の教育改革、文科省と一緒によくこの仕事をするのですけれども、スーパーサイエンススクールとか、そういったグローバル人材事業にかなり補助金が出ています。そういった学生をハワイに連れてきて、他の国の子どもたちと一緒に環境について問題提起をして、アクティブラーニングでプレゼンテーションをして、そしてディスカッションをして、プランを作るというものに実際に参加してもらって、学校の先生も呼んでFAMツアー、視察をやっています。 もしくは、サステイナブル・コーストラインズ・ハワイと一緒にビーチクリーンナップを行う。今は海洋ゴミベルトというのもありまして、今も震災のゴミが全てハワイ島の南のビーチに届きます、流れてきます。それをクリーンナップして、クリーンナップするだけではなくてゴミを分別して、何が一番サンゴに悪いのか、魚に悪いのかを調べて勉強するということを、ニュージーランド、オーストラリア、そしてハワイ、日本の子どもたちと一緒にやっています。 子どもたちはハワイからゴミを持って帰れないので、日本の寺院さんが9月にずっと日本でビーチクリーンナップをやっていました。そのゴミをもらってきてカメを作って、大阪のツーリズムEXPOの私どものパビリオンでそのカメを飾って、「ハワイでカメを見たら3m以上近づかないでくださいね」という啓蒙をやりました。そういういろいろなやり方があるという事例など、皆さんといろいろと情報交換をしながら、新しい観光のマーケティングについて考えていこうということです。 (米沢) さすがハワイは観光の最先端をいっているなということを改めて感じました。それでは、お待たせしました。創造都市会議の準レギュラー、3回目です。太下先生、お願いします。 (太下) つい1カ月ほど前、北海道のニセコで世界観光大臣会合が初開催されました。日本ではそれほど大きく報道されませんでしたが、これはすごく大きなことだと思います。この世界観光大臣会合の中で、オーバーツーリズムという問題が大きく取り上げられた。訪問者、地域社会の双方に恩恵のある観光マネジメントを進めるということが宣言文に書かれたということも、やはりすごく大きなことです。 実は、こういう動きは既に世界的に起こっておりまして、先ほどご紹介したUNWTOでは、昨年、まさに「オーバーツーリズム(観光過剰)」というタイトルの報告書を公表しています。本来であれば、UNWTOは観光を推進する振興する機関であったと思いますけれども、持続可能な観光のために、このオーバーツーリズムの問題というものを正面から捉えざるを得ない状況になってきている。 小林さんが事務局を務めていらっしゃる観光庁の方でも、持続可能な観光先進国へ向けてということで本部が設置されたということです。そして、「持続可能な観光先進国に向けて」という報告書と先進事例集が発表されています。日本も既にこういう手を打っているという状況にあるわけです。 観光マネジメントということを考えた場合、二つの視点で同時に考えていかなくてはいけないだろうというふうに思うわけです。日本で言うところの京都が代表的な事例であるように、ある特定の観光地、特定の都市、またさらに特定の地区におけるマネジメントというミクロ的な側面がありますけれども、一方で、政府としては2020年に4000万、2030年6000万という大きな政策目標を掲げています。 さすがにこの2030年6000万人というのはかなり大きな数字になってくるわけです。2018年が3000万ちょっとぐらいという数字でしたでしょうか。ですから、大体倍ですよね。倍と考えると、結構大きいですよね。 ただ、現状、この数字はざくっと今の空港別の入国者数になっていますけれども、成田空港、そして関西空港、それから羽田空港、この三つの空港が、かなり突出して訪日外国人を受け入れているという状況になっています。 ただ、先ほど言ったとおり、日本の政府全体の目標は、ほぼ2倍に持っていこうと数字ですから、こういう拠点空港は、多分、マストで2倍にしていかないと、外国人の受け入れは達成できないということになりますよね。現状から各空港がどれくらいキャパシティを増やしていくのかという構想を入れ込んでいって、残りは他の地方空港が担ってみるという仮の試算で計算してみますと、これは単純な計算なので一つの試算でしかないのですけれども、拠点空港だけではやはり担い切れない。では、その部分がもし他の地方空港に来てしまうと、地方空港は元々母数が少ないですから、かなりの現状比の倍率を担っていかないと、この6千万という数字にならないという試算になってしまうのです。そういった意味で言うと、現状受け入れている成田、関空、羽田そして拠点空港は、最低は2倍の訪日外国人を受け入れていただかないと、なかなか全体の目標を達成できないということになるわけです。 仮に地方空港に6倍来てしまうとどういうことなるかというと、小松空港は2018年の訪日外国人の入国者数は8万6969人でした。これを6倍すると52万7855人というとんでもない数字になるわけです。これは一つの試算ですけれども、でも少なくともこれは倍にはなるわけです。政府目標が倍ですから。そう考えると、この金沢で観光マネジメントと、そして都市環境の維持と調和ということを考える上でも、大きな、マクロでは増えていく中で観光マネジメントを考えていくという、マクロとミクロの両方の視点を同時に持っていないといけないということになっていこうかというふうに思っております。 これが一つ大きこうした中で、一方で、羽田も成田もかなりキャパシティがいっぱいになりつつあるという現状があるわけですから、むしろ積極的に地方空港はこれに立ち向かっていくといいますか、受け入れていくべきではないかということで、全国の政令指定都市の市長会では、観光先進国実現に向けた提言として、「プラス・トーキョー」というキーワードを使って、「『プラス・トーキョー』をはじめとする地方観光の強化へ向けて」という報告書を、昨年、国土交通相等に提出しています。 (米沢) ありがとうございました。ここで、京都にお住まいの佐々木フェローにご発言を願いたいと思うのですけれども。よろしくお願いします。 (佐々木) 金沢から離れて、大体20年京都に住んでいて、20年前の京都は、観光産業が結構苦境でした。例えば、修学旅行生が沖縄に取られたりしていましたのでね。そのとき、京都市政は観光5000万人構想を出すのです。それで、それを今の門川市長が引き継ぐのですが、私は「ちょっと京都らしくないな」と言ったのです。5000万というのは、まあ観光統計はいい加減だということは前から分かっているので、いくらでもアバウトに計算できるのだけど、要は、量ではなくてクオリティの問題を出さなければ駄目だと。先ほどから出ていますよね、質の高いツーリストをレスポンシビリティツーリストと呼ぶと。そういう次元の違う話に持っていかないと、京都は文化都市らしくいない。そういうことをずっと言っていました。それがやっと最近市長も分かったようで、それでいろいろな抑制に乗り出すと。でも、少し手遅れのような気がします。 (米沢) 今、佐々木先生が「文化を楽しむ場所だ」とおっしゃられました。明日は提言につなげないといけないのですけれども、先ほどおっしゃったように季節の分散化、時間の分散化、場所の分散化、京都は何かスマホのようなもので混雑を知らせているらしいのですけれども、やはり基本的にはマネジメントしないといけないような、そうでないとうまく分散化しないと思っています。そうするには条例とかいろいろなものが必要になってくるので、どうしてもそういうガバナンスをかける組織が必要になってくるのではないかなという気がしました。先ほどミツエさんがおっしゃったようなツーリズムオーソリティまではいかないにしても、ある程度権限を持って、きちっとした新しい条例を作るようなしっかりとした組織が必要かなというふうに思っていまして、そのあたりを明日、討論の中で述べさせていただければと思います。長時間、本当にありがとうございました。これで第3セッションを終わらせていただきます。 お礼の言葉 米沢 寛 (金沢創造都市会議開催委員会実行副委員長) 先ほど山出前市長のお話が出ましたけれども、創造都市会議の中で、やはり観光客がたくさん来るまちの市民は、寛容性を持たないといけないという議論があったと覚えています。そのときに、前山出市長が「いや、来る人もまちを知った上で謙虚さを持ってほしい」としっかりおっしゃっていまして、今こそそういう話なのかなと思います。寛容性と謙虚さ、それらをうまく合わせると、持続可能なまちになるのかなということを改めて感じさせていただきました。1日目終了の挨拶とします。明日もよろしくお願いします。 |